事件の概要

2019年1月30日、奈良県内の解体業者が解体作業中の民家で発見した現金約3,900万円を盗んだとして逮捕されるという報道がありました。

事件は2017年8月に兵庫県三田市の男性(69歳)が所有する住宅の解体工事現場で起きました。住宅は男性が亡くなった兄から相続したもので、敷地内に現金が残されていることを知りませんでした。
男性から解体工事の依頼を請けた奈良県大和郡山市の解体業者の男と同県内の解体業者に務める男二人は、解体作業中に現金を発見し警察に届け出なかったようです。

事件当時に同じ現場で作業にあたっていた別の工事関係者から「一昨年10月に解体現場で現金を盗んだ」と警察に報告されて発覚しました。
警察の調べに対して、現金を盗んだとされる3人について捜査が続いている模様です。

今回被害に遭った男性のように、相続家屋の解体依頼者は年々増加しています。また、政府による相続家屋の売却時減税措置を延長する動きも影響し、今後も解体依頼者は増加するでしょう。
このような事件を起こさないためには何が必要なのでしょうか。

解体工事現場の実態と改善点

解体現場

今回なぜこのような事件が起きたのか要因を見てみると、解体工事がどのような現場状況で行われるかが事件発生と関係しています。

周囲から見えにくい解体現場の中身

現金の発見を報告しなくてもわからないだろう、といった作業員自身の意識の持ち方も事件を引き起こした要因のひとつとして挙げられます。

解体工事では通常、工事中の瓦礫(がれき)や粉じんの飛散防止を目的に養生幕で建物を覆います。
一般的に養生幕は工事車両や重機が出入れする箇所を除く三方向を建物が隠れるくらいの高さまで覆います。
養生幕で覆うことで取り壊し中に瓦礫やガラスの破片が周辺に飛び散って外壁を破損させたり、粉じんで隣家の洗濯物や車両に舞って汚してしまう影響を抑えられます。
安全対策・近隣対策としては有効である一方で、周辺から建物が見えにくく、当然死角は多くなります。

報告・連絡・相談の習慣、徹底がなされていない管理体制

解体工事は危険を伴う作業が発生するだけでなく、想定外の構造や地中埋設物が発生するケースは少なくありません。
今回のように、所有者が把握していなかった残置物、財産が発見されることもあります。

こういった事態が起こる解体現場で適切にかつ安全に解体工事行うには、現場を管理・指示を行う責任者が解体現場の状況を日々正しく把握することが必要です。
何か問題が起きた際は作業員が現場状況を速やかに報告する、必要があれば写真など証拠を保管しておくなど、万が一のケースを想定した具体的な準備が大切です。

解体工事の現場では、経営、営業活動、現地調査、見積り、現場作業など様々な業務を業者の社長が一貫して行う会社もあれば、それぞれの担当者を採用しているケースもあります。
各会社に合った「報告・連絡・相談」の体制を整えることが必要です。

解体業界の現状

解体現場

解体業界では、いまだに悪徳業者と呼ばれるような工事を行う業者が存在しています。
不法投棄、金銭トラブル、ずさんな工事など、その手口、被害は様々です。
また近年では、建設重機の会社や不用品回収業者、水道屋さん等、他業界から解体工事業界に参入している会社も存在します。

ずさんな工事が行われる解体現場の多くは、業者が会社全体で適切に工事を行っていない場合や、社長を含めた管理を行う立場の人員が実態を把握していない場合もあります。

今回のような犯罪に発展していなくても、しっかりと現場管理が行われていないと、事故につながる危険性がある解体業者は実際に存在しているのが実情です。
こういった解体業界の現状がある中、これから解体工事を依頼する方が悪徳業者に工事を発注することがないよう、解体業界全体の環境改善が必要です。

解体工事を行う人が気をつけるべき事は?

では実際にこれから解体工事を行う方はどういった点に気を付けるべきなのでしょうか。

一般的に解体工事を依頼する際の注意点として、
解体工事に必要な許可証を保有しているか?賠償保険に加入しているか?
また、見積りなどのやりとりでを対応する営業担当者の対応は適切か?
など確認すべき点があります。

しかし、これだけでは今回のような事件は防ぐことができません。
例え許可証や賠償保険の保有が万全でも、また、やりとりをしている担当者の対応が良かったとしても、実際に解体現場で作業を行うスタッフが適切に工事を行っていなければ、事件や事故が発生する危険性があります。

解体業者を選ぶ際は、インターネットで収集できる情報だけを頼りにするのではなく、解体業者の実態に基づく信頼できる情報を収集し、慎重に業者を選びましょう。

まとめ

今回の事件が起きたことで、改めて解体工事現場の管理体制、作業員に対する教育の重要性が浮き彫りになりました。
こういった事件を起こさないために、解体業界に従事する全員がどう意識を持つべきか、解体業者は企業としてどのような社員教育、現場体制を整える必要があるか、具体的な改善をしていく必要があるのではないでしょうか。