実家が空き家になっているがなんとなくそのままになっている、そもそも誰に相談したらいいか、どこから手を付けたらいいのかが分からない…そんな方にぜひ利用していただきたい事業が始まりました。平成28年12月1日に東京都で開設されたばかりの「空き家のワンストップ相談窓口」です。
この「空き家のワンストップ相談窓口」ではどんな体制が整えられ、どんな対応が可能なのでしょうか。
「空き家のワンストップ相談窓口」の体制の仕組み
平成25年の総務省の調査によると、東京都内の空き家は約82万戸あり、うち腐朽・破損がない空き家は約66万戸。うち長期未使用になっている空き家は約11万戸になるといいます。高齢者のみの世帯で、将来的に空き家になる可能性が高い持ち家は約80万戸…。将来のためにも、今後の空き家対策として具体的に取り組んでいく必要があるといえます。
では、空き家のワンストップ相談窓口の登場により、具体的にどのような取り組みができるのでしょうか。
空き家のワンストップ相談窓口の概要
相続等で発生した空き家の売却・賃貸・適正管理等の利活用を図るため、平成28年度東京都相続空き家等の活用円滑化モデル事業を行います。
モデル事業者が「空き家ワンストップ窓口」を設置し、空き家保有者等に対して、具体的な手法や経済的な試算等を含めた情報を提供します。モデル事業者は東京都から費用の一部(平成28年度は1業者あたり300万円)を補助されます。
また、東京都はモデル事業者が行った相談結果をまとめて都民に提供します。ただ相談を受けて終わることなく、都民の間で情報を共有できるという取り組みは、空き家の利活用を考える人たちにとっては参考になるので嬉しいですね。
対象となる相談者は、東京都民または東京都内に相続空き家等を所有する方で、東京都が行うモデル事業の事例収集にご協力いただける方になります。
また、空き家のワンストップ相談窓口で提案してもらえる内容は、主に下記の通りです。
モデル事業の期間は、平成28年12月1日から平成30年3月31日までになります。
また、東京都の空き家におけるワンストップ窓口の相談者一人あたりに対する補助金制度があります。
※補助金は、相談窓口で具体的にお話しが進み、助成の対象になると該当された方が申請可能になります。
先着順になるので確認が必要です。
ワンストップ窓口の相談窓口は公募により以下の3者になりました。
東京都に設置した民間事業者または団体で、実績が評価され、モデル事業を円滑に行う能力があると認定された事業者が選ばれています。
まずは、気になる事業者にお問い合わせしてみてください。
ワンストップ相談窓口の各モデル事業者の特徴
東京都に認定されたモデル事業者は3者あるとご説明しましたが、3者のうちどこに相談したらいいのか?と迷われる方も多いと思います。
3者それぞれの特徴をみていきましょう。
NPO法人 空家・空地管理センター
NPO法人 空家・空地管理センターは、非営利団体であり、空き家や空き地の管理、活用方法の相談も無料で行っています。
センター独自の「空地空家管理士」という資格所持者が存在し、弁護士等の専門家の協力事業者と連携し、総合的な解決に向けた提案ができる特徴があります。
リフォーム関係にも強く、空き家や空き地に特化した活動経験が豊富のため、専門家や協力事業者もたくさんいる中で連携できているため、ワンストップで解決につながります。
東京急行電鉄株式会社
東電は、提携会社と組んでいるので事業者も紹介しやすく、沿線関係に強いことが特徴です。
東急沿線はもちろん、他の地域でも可能であり、駅前に窓口があるので直接相談にも行きやすい環境にあります。
多数の提携会社があるため具体的なプランの提供、対策や見解を複数提示してもらえます。
また、住まいのプロフェッショナルである「コンシェルジュ」と呼ばれる専門家がサポートしています。
何度でも相談無料で、店舗にもよりますが21時まで営業しているところもあるので心強いですね。
ミサワホーム株式会社
ミサワホームは、相続者から空家相談をワンストップで受け付け、専門家や協力事業者との連携を図って提案ができる「住まいるりんぐDesk」という取り組みの実績が評価されています。
全国ネットワークのミサワホームならではの提携で手厚い相談ができるところが特徴です。
遠隔地に所有する土地の有効活用に関する対応などにも強く、今、相続税対策として注目されている「家族信託」など、ミサワホームの豊富なノウハウでアドバイスしてもらえるので、円滑な相続にしたいと考える人にも安心な窓口です。
空き家を売ったり、活用したりというのは、今まで経験したことがない人がほとんどですから、分からないことが多く不安だと思います。ワンストップ窓口の相談において、連携してアドバイスをしてくれる専門家は、弁護士や税理士、司法書士、建築士、インスペクターなどと協力し、20~30者と協力体制を整えています。手厚くサポートしてくれる専門家がいれば、自分では考えられなかった空き家対策方法も提案してもらえるかもしれません。無料で相談を受け付けてくれるところも多いのでぜひ問い合わせてみてください。
空き家の活用例 各地ではどんな取り組みがある?
空き家には「売却」「賃貸」「直す」「壊す」の4つの活用方法があります。
東京都の小池百合子知事は、この空き家を保育施設に活用するといったような公的利活用にもこのモデル事業を通じてつなげていきたいと考える意見を述べていましたが、実際にどのような空き家活用の仕方があるのでしょうか。
各地でも取り組まれている住居以外を含めた空き家活用方法の事例をご紹介します。
賃貸物件として貸す方法
大家さんが原状回復費用を負担する必要がない代わりに、入居者が自費で修繕や壁紙を張り替えるなどのDIYができる借主負担型の賃貸借契約、「借主負担DIY」が今注目されています。
事前に、修繕可能箇所の取り決めは必要になりますが、空き家から収益を得ることができるうえに、管理も入居者である借主がしてくれるので、借主負担DIYはメリットが多いかもしれません。
また、シェアハウスによる賃貸というのも1つの手段です。賃料が安く、需要はありますが、入居者の入れ替わりが多いので、安定収入は難しい点が挙げられます。しかし、複数の入居者がいれば、1軒で貸すよりも合計家賃が高く得られるので、少しでも足しになれば損はないでしょう。
公共の場として再利用
利益を考えないのであれば、地域住民が集まるコミュニティースペースとして、空き家を自治体やNPO法人等に使用してもらう手段もあります。地域貢献に繋がり利用価値は高いと思いますが、基本的には寄贈するかたちになると思います。
管理は地域の担当で行ってもらうようにすれば、運営費用もかからず済みます。
また、福祉や医療分野に提供する方法もあります。
空き家を利用したフランチャイズ型のデイサービス事業をしている企業もあり、高齢化社会だからこそ需要はあるのではないでしょうか。ただし、運営してくれる団体等がなければ難しい活用方法なので、時間はかかるかもしれません。
他にも空き家を民泊や民宿にする事例もありますが、有償で宿泊場所を提供することは多くの法律が関係してきます。
特に「旅館業法」という法律で細かい規定があります。
外国人旅行者数が増加する中で、観光客の受け入れが不足になっているという問題もあり、個人が手軽に空き家を使い、利用者を泊めることが出来る民泊ビジネスは増えていますが、マナーの問題や違法性が問われることから、この利用に関しては慎重に行う必要がありそうです。
まとめ
今や社会問題になっている空き家の増加。空き巣や放火など、犯罪の温床にもなっています。
空き家所有者で、手がつけられずに悩んでいる方は、ぜひ「空き家ワンストップ相談窓口」を利用して不安を払拭しましょう。
各地での空き家の活用方法を知ったうえで、活用イメージを広げるのもひとつです。
各相談窓口で対応してくれる専門家の方と具体的にどうしていくべきかじっくり相談し、納得できる空き家活用方法を見つけ、実際に行動に移せるようにしていきましょう。