2016年10月14日に、東京・六本木のマンション工事現場から鉄パイプが落下し、通行人の男性が死亡するという事故がありました。

現場は11階建てのマンションで、作業用の足場を回収していた最中に長さ1.9m、直径4cmの鉄パイプが落下し、たまたま通りかかった77歳の男性の頭部に刺さるという事故でした。男性は救急搬送されましたが、その後死亡が確認されました。
落下した場所から地上までは30mはあったとみられ、衝撃が強かったといえます。

では、何が原因でこのような悲惨な事件が起こってしまったのでしょうか。

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引用:毎日新聞

工事を請け負っていた会社関係者によると、ブレス、または下桟(したさん)と呼ばれる細目のパイプが落下したのではないかということでした。下桟とは、人が転落しないように足場に設置するものです。
このときの工事現場の作業員は「誤って落としてしまった」という趣旨の説明をしているそうです。
そして、パイプが落下した場所の上の一部分だけ、資材などが路上に落下するのを防ぐ防護パネルや防護ネットが一部設置されていなかったことも分かりました。

通行人の男性は、工事現場から4m以上離れた迂回路を歩いていたところで事故が起きたようですが、会社側はこの迂回路について、建物からどのくらいの距離を置くか具体的な基準はなかったと説明しています。
現場には誘導員が2人いました。解体した資材を下ろす際は、通路を通行止めにしていたそうですが、この事故当時、誘導員が上を見て確認したところ、「今は資材を下していない」と判断し、通行人を通したといいます。

警察は、迂回ルートの設定、歩道上の安全が適切だったか、鉄パイプが落下する途中で何かに当たって跳ねた可能性も視野に入れて捜査をしています。

工事現場の実態と改善点

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今回の鉄パイプ落下事故は、通行人を巻き込んでしまった事故でしたが、作業員たち自身も常に危険な作業内容と向き合っています。
現在の工事現場は、どのような状況下にあるのでしょうか。

厚生労働省によると、2015年は327人の作業員が建設現場で事故に遭い、命を落としています。
2011年の東日本大震災での復興需要に合わせ、東京オリンピック開催が決まったことで、近年の建設現場は人手不足が深刻な問題になっています。この人手不足により、施工スケジュールもタイトになってくると、建設現場での事故は作業員だけにとどまらず、今回のような一般の人をも巻き込む事故に成り兼ねません。

建設現場の足場での手すりの普及

そんな危険が潜む建設現場には安全対策も見直されています。
2015年7月には建設現場などでの墜落、落下防止のための「足場関係」の労働安全衛生法の改正があり、2016年1月には、高所で行う場合の墜落を防ぐ「ロープ高所作業」についての規則改正が施行されました。
「足場関係」の改正により、足場の組み立てなどの墜落防止措置を充実させ、特別教育(安全衛生特別教育規程という知識を身につけるを受ける機会もでき、また「ロープ高所作業」により、ライフラインの設置、作業計画の策定、特別教育の実施などが新たに義務づけられました。

作業員自身が、現場での安全意識をより高め、安心して働くことができることができる環境づくりは、一般の方への安全にも繋がってくると思います。

工事現場の作業員が取るべき対策

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法律でも安全対策が図られ、現場でももちろん日々声かけは行っていると思いますが、それでもまだ工事現場に潜む危険を甘くみている人は少なからずいるかと思います。
そこで、必ず作業員がするべきことは「起こり得る危険をイメージする」ことです。

まず、作業現場はどこに位置しているか、現場の位置関係と状況を把握します。
もし学校に近いところであれば、子ども通りが多く、急に飛び出してきたり、現場に迷いこんだりすることもあるかもしれません。
また、今回の事故も、通行人が通る人通りも多い六本木での工事ということで、接触事故の危険性は十分想定できたことではないでしょうか。

他にも、真夏の炎天下での作業では熱中症の危険が想定でき、溶剤を使用する作業の場合は、身体に毒な溶剤を使用することで体調が悪くなる可能性があるなど、作業環境によって予想ができます。
具体的に「危険性」や「可能性」をイメージして作業し、さらにそのリスクに対する具体的な対策を事前に準備しておけば、気持ちがより引き締まり、作業への取り組む姿勢も変わるでしょう。

ここで特に注意が必要なのは、現場慣れをしていない人への配慮です。現場慣れしていない経験が浅い作業員は、まだそのリスクを予測し、具体的な対策までをイメージすることができていないかもしれません。
そういった作業員への配慮も、現場では事故を回避するために重要になってくるといえそうですね。

工事現場で一般の方が気を付けること

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工事現場付近を一般の方が通行される際、「事故に遭うかもれない」と思って歩いている人はほとんどいないでしょう。しかし、自分の身は自分で守るということも大事です。
工事現場付近を通る際は、たとえ誘導員がいたとしても周囲を見渡して、足元に段差など歩きにくいところはないか、ゴミが落ちていたり危険なものが置かれていないか、仮囲いが倒れたりする恐れはないか、しっかり自分自身の目で周囲を確認しておくことも必要です。
誘導員の方が、作業員としっかりと声を掛け合ってコミュニケーションが取れているかも、目の付けどころかもしれません。

工事業者に依頼すべき安全対策

工事現場での事故の発生は、現場や被害に遭った方だけの問題に限りません。
自分が解体工事などを依頼した現場でこのような命に関わる事故が発生した場合、依頼した側も、また近隣の方も良い思いをする人はいないと思います。
工事を依頼する業者を選ぶ段階から、安全対策をしっかり取ってもらえるかを具体的に確認すると同時に、万が一事故が起きてしまった場合の対応の確認を行う必要があるといえます。

まとめ

工事現場の実態を改めて知ることで、いかに現場に危険が潜んでいるかがお分かりいただけたのではないでしょうか。作業員は、その時の現場の状況や環境によってリスクを想定し、安全対策を具体的に実行しておくことで、事故を回避することはできると思います。

また、作業員の責任はもちろんのこと、工事現場付近を通行する方や工事現場に関わることになった一般の方も、ご紹介した注意すべき点に目を向け、現場の状況をしっかり確認して自分の身を守りましょう。