出演概要
2021年11月16日、東京都北区赤羽台3丁目の解体工事現場でクレーン車が転倒する事故が発生しました。当協会の中野が、想定される事故の原因等について「生出演をして解説」しました。
事故概要
解体工事現場は重機が進入できない旗竿地。約13トンの移動式のラフタークレーンで5メートルほど上の高台から重機を引き上げようとした際、クレーン車が前方に転倒。クレーン車のブーム(アーム)が隣接するアパートの塀を直撃したが、幸いにもケガ人はなかった。当時、天候は穏やかでした。
事故原因の分析
事故当時の報道映像の確認と、ラフタークレーン車の操縦実績が豊富な協力業者と事故現場を視察して原因分析を行いました。
・引き上げる重機の重量に対し、クレーン車の重量が不足していた可能性が高い
・吊り作業中にクレーン車を支えるアウトリガが1本しか張り出されていなかったことが伺える(原則、4本すべてのアウトリガを張り出す必要がある)
・アウトリガと地面との間に鉄板養生をしていなかった可能性が高い
・クレーン車の転倒を予測し、警告音を発したり、動作を抑制したりする安全装置をキャンセルしていた可能性がある
上記は、ひとつ該当するだけでもクレーン車が転倒する原因と成り得ます。当該事故は、起こるべくして起こったと言っても過言ではない状況でした。
※アウトリガとは
作業中のクレーン車を安定させるための、車体横に張り出すジャッキのような役割をもつ装置のこと。
原則、左右前後4本すべてのアウトリガを最大限張り出し、車輪が浮くまでジャッキアップさせる。
安全を優先した工法の選択が重要
現場状況から、クレーン車での吊り作業のリスクを考慮すれば、当該の解体工事は手壊し手運びにて行うのが最善だったと伺えます。実際、工事現場には一輪車もあり、工事前半は手壊し手運びにて進行していたことが伺えます。疑問が残るのは、当時、なぜ重機を引き上げなければならなかったということです。(重機を下ろす時に転倒した、というほうが自然な状況でした)
商業上、予算削減や工期短縮も重要ではあります。しかし、安心安全の解体工法を選択することが大切です。